受注再開のお知らせ

Axiom Materials社(米国カリフォルニア州)との契約に基づく、SiCベースの複合材料のNITEプレプレグシートの生産支援に注力することと、コロナ禍の渦中において生産活動が大きく制約を受けることを受けて在庫品の小規模な販売以外は受注を停止しておりましたが、状況の好転を受けて来る4月1日より、以下の製品の受注を開始します。
現状では生産体制の再構築などの問題もあり、必ずしもご期待に沿えないことになるかもしれませんし、特に、納期においてご期待に沿えない可能性はあります。

NITE複合材料用中間素材:

Green-sheet:

SiCマトリックス形成用

Prepreg-sheet:

SiC繊維強化 及び C繊維強化の構造形成用
一方向繊維強化用 及び 2方向繊維強化用織物

(注)使用するSiC繊維、C繊維は基本的には決まっていますが、
可能な範囲でご要望に応えるようにいたします。特に、織物の仕様に関しては入手できる範囲で対応します。

NITE複合材料:

C/SiC複合材料:

板材、ブロック材、棒材

SiC/SiC複合材料:

板材、ブロック材、棒材, 管材

(注)SiC/SiC原子力用燃料被覆管は現状では国内向けのみです。
国外からのご希望についてはこれまで通り、輸出許可が得られる内容であることを確認後回答します。

世界初のセラミック複合材料の大型連続製造を開始

-京都大発特許で米国企業との協力契約-

1.背景
経産省の CREST 計画「低環境負荷エネルギー用複合機能構造材料の開発研究」(1997 年-2002 年:京都大学エネルギー理工学研究所 研究代表:教授 香山晃)において開発され、特許化されたナノテクノロジー技術(以下、NITE 法)は、京大発のベンチャー企業の活動と並行する大学における大型研究を通して、実用化研究が進められてきました。しかし、国内での本格的な実用化には多くの困難が伴うため、海外の企業との連
携を検討してきました。その結果、本年米国企業(AXIOM Materials Inc.)への特許権使用が特許権を保有する科学技術振興機構(JST)に認められ、さらにベンチャー企業である株式会社 NITE(代表 香山晃)が技術供与及び共同開発契約を結ぶことにより、世界初となる炭化物系セラミック複合材料の大型連続製造設備が開発され、間もなく試験稼働が始まります。大量生産されるプリプレグシートを重ねたプリフォームを成型する
ことで多くの製品が作られます。
炭化物系セラミック複合材料としては、炭化ケイ素(SiC)繊維で強化された SiC/SiC 複合材料が航空宇宙や原子炉・核融合炉材料として期待されていますが、大規模な製造に対応する技術は NITE 法以外には存在しません。炭素繊維で強化された C/SiC 複合材料も自動車のブレーキなどでの大きな需要が見込まれます。

2.研究手法・成果
本 CREST 計画では、環境低負荷型の社会システムを開発するという研究プロジェクトの一課題として、環境にやさしく、高効率なエネルギ―生産に必須となる耐環境性高温材料の開発を考え、セラミックス複合材料の開発に着手しました。セラミックス複合材料の製造法には、原理としてはよく知られているいくつもの方法がありますが、これらを新しい技術の観点から見直すことにしました。特に素材を考えるうえでナノテクノロ
ジーを駆使することを考えました。その一つとして SiC ナノ粉末を世界中から探し、入手できるものについて特性の評価を進めました。この検討は、従来技術である化学気相蒸着法(CVD)、液相焼結法(LPS)、反応焼結法(RS)、ポリマー含浸焼成法(PIP)においても特性の大きな改善をもたらしました。しかし、NITE 法はLPS 法の進化したものであり、これまでの材料が実現できなかった高密度化や気密性の飛躍的な改善などを実現することができ、初めて原子炉で使う材料としての気密性や加工性、接合性などの要求性能を満たすこととなりました。
比較的小型の材料評価試験棟で用いる材料の製造は株式会社 NITE で行いますが、米国の原子力プロジェクトでの評価試験や航空機等での利用に向けた素材試験には製造能力の 1000 倍以上の拡大が求められ、国内での実現はほぼ期待できない状態となりました。このように NITE 法によって製造される材料は、基本特性としては優れているものの、需要を満たす安定した材料の供給源がなく、実用化が遅滞していました。そのような状態の中、米国の企業が、米国政府の支援も受けて進めることを決断し、今回の活動が実現しました。
東レが炭素繊維の開発を続け、爆発的な世界市場を生み出し、炭素繊維(C繊維)が幅広く使われるようになりました。C繊維の約 5000 億円の世界市場において我が国は 1 位から 3 位を占めており、50%以上のシェアを維持しています。大部分は複合材料の強化繊維として使われています。現在 SiC 繊維の供給も最近の国際企業連合(日米仏の合弁会社)の活動により数年前から 1000 倍以上の生産規模へと拡大しています。今後、NITE 法によるプリプレグシートの生産によって、大量の SiC 複合材料の供給が可能となります。これにより、C 繊維強化複合材料の世界的な市場拡大と同様の市場形成と拡大が見込まれます。本計画では、材料科学の基礎研究をベースとして新しい概念のプロセスを創出し、極限用途での使用に耐える材料構造を生み出しました。そして、この概念を実現させるためのプロセス検討等を企業とも協力して進めることにより、今回の大規模生産に向けるプロセス装置設計の基礎が出来上がっていきました。この材料開発の歴史は、さらに新しい材料の開発においても生かされると思われます。

3.波及効果、今後の予定
CREST-ACE 計画とそれに続く大型プロジェクトにより、NITE 法によって製造される SiC/SiC 複合材料の優れた特性が材料科学的にも証明され、海外の国立研究所や第三者機関等による評価において追認されてきたことは重要です。原子力用の材料開発として通過しなければいけない原子炉実験をいち早く実現させたことは重要ですが、この成果を実用化に結び付けることは、大学や公立の研究所の仕事の枠をはみ出します。今回の
ように積み上げられた成果が実用化能力を有する大企業によって有効利用され、社会の持続可能な発展に貢献できることは、大型プロジェクトの目指す目標の実現にほかありません。
国産の技術を国内で事業化することが理想でしたが、大学の技術を企業活動にもっていく手法をベンチャー企業で、リスクを最小限にして進めることで思うように進展できなかったことは悔やまれます。大企業との共存などを上手に進めることが重要だったと反省します。
原子力開発や軍事関連活動に対する反発が先進技術開発において多くの応用分野を制限し、発展を遅らせる事になっていることは、社会倫理との共生も含めて今後の重要な課題であると考えます。

4.研究プロジェクトについて
CREST-ACE 計画は経済産業省の予算でした。この計画には大学(大阪大学、北海道大学、東京大学など)・国立研究所(物質・材料研究機構など)・公立研究機関(日本原子力研究開発機構など)・企業(東芝、宇部興産など)なども参加し、関連する多くの研究者や技術者を含む活動となり、研究領域の活性化にも大きく貢献しました。国際的にも IAE や IAEA の関連開発計画のグループにおける貢献度は高かったと考えます。その後の原子力や核融合関連の活動、地熱開発事業、航空宇宙関連の活動等も文部科学省や経済産業省の研究予算で進められ、3 年から 6 年の長期大型予算によって支援を受けたことは今回の成果につながる大きな要因です。

<研究者のコメント>
今回の成果は研究代表者(香山)にとっては大学での卒業研究からスタートし、材料科学の基礎を常に軸として進めてきた活動です。固体物理の基礎研究が最終的には幅広い分野で用いられる工業材料として世界に羽ばたこうとしていることは感無量です。50 年を超える大学の枠を超えた活動が多くの人材も生み出し、社会貢献もしながら新材料の実現に至ったことは持続・継続すること、基礎科学の重要性を示しています。

<お問い合わせ先>
香山 晃 (こうやま あきら)
株式会社 NITE 技術統括, 京都大学名誉教授
〒277-0005 千葉県柏市柏 1127 番1オークリバーズ宮前504
TEL:04-7179-5390
FAX:04-7179-5391
E-mail:info@nite.co.jp



米国AXIOM Materials Inc.との技術協力契約により米国での大型製造ラインによる製造を開始します。

(日本科学技術振興機構(JST)からNITE法特許権使用権供与契約締結済み)
株式会社NITE(本社:室蘭)は代表者香山晃が発明者であるNITE法特許(JSTが特許権者)について、AXIOMがJSTより実施権の許諾を受けたことに伴い、AXIOMに対してNITEの保有するノウハウの供与と技術指導を行い、米国においてC/SiC, SiC/SiC複合材料の中間素材となるグリーンシート(Green-sheet)とプリプレグシート(Prepreg-sheet)の製造開発を共同して進める契約を令和2年6月11日に締結しました。この一連の活動に際して、2018年12月には両社間において技術協力に関する機密保持契約が締結され、共同開発の方針や知特許権獲得の活動が進められてきました。
この契約によりAXIOMはNITE法でのC/SiC, SiC/SiC複合材料用の中間素材であるグリーンシート(Green-sheet)とプリプレグシート(Prepreg-sheet)の製造開発をNITEの技術開示に基づき展開します。既に大型の製造ラインはほぼ完成しており、一部のコロナウイルスによる感染爆発が完了し納品遅れが解消すると期待されている2020年度の第4四半期には製造ラインの稼働を予定しています。
AXIOMは酸化物系セラミック複合材料の米国でのシェアの首位を占めており、親会社のKordsa(本社 イスタンブール、トルコ)の世界シェアに大きく貢献しています。今回の契約により、Kordsa及びAXIOMはセラミック複合材料分野における世界1のメーカーとしての世界戦略の実現に大きく近づいています。
株式会社NITEは日本、中国、韓国、台湾における独占販売権を確保しており、次年度以降での積極的な営業展開を目指しています。
NITE製品であるSiC/SiC複合材料はこれまで数多くの文部科学省・経済産業省等からの公的資金の支援により技術開発を進めており、NITE法は経産省のCREST計画「低環境負荷エネルギー用複合機能構造材料の開発研究」(1997年-2002年:京都大学エネルギー理工学研究所 研究代表:香山 晃)において開発され、特許化されました。主要な支援は革新的な原子力システム開発関連予算や地熱開発などの新しいエネルギー材料開発の研究資金により継続されてきました。NITE法の実用化は京都大学時代のスピンオフ企業であるエネテック総研の活動で進められ、グンゼの支援を受けつつ、2017年に発展的に株式会社NITEが設立されました。
この間、2010年からは室蘭工業大学に環境・エネルギー材料研究機構(OASIS)が設立され、公的資金を基本として大型の研究開発が並行して進められてきました。

Axiom 社は セラミック複合材料の製品構成を Carbon/SiC複合材料とSiC/SiC 複合材料にまで拡大

航空宇宙産業や幅広い工業分野で利用される 酸化物系セラミック複合材料中間素材(プリプレグ)の開発と供給における世界的なリーダーであるAxiom社は炭素繊維強化炭化ケイ素複合材料(C/SiC)と炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素複合材料(SiC/SiC)の中間素材製造ラインを日本の科学技術振興機構(JST)と株式会社NITEとのライセンス契約に基づき開発しました。
この事業展開によりAxiom社は航空宇宙産業や幅広い工業分野で耐熱構造材料として1400℃の高温領域までの需要を完全にカバーできるセラミック複合材料製品の供給が可能となります。
航空宇宙産業や幅広い工業分野で利用される 酸化物系セラミック複合材料中間素材(プリプレグ)の開発と供給における世界的なリーダーであるAxiom社は日本の科学技術の中核をなす公的機関である科学技術振興機構(JSTは2017年のロイター通信による「革新的組織の世界TOP25」で最も革新的な研究機関の第4位に選出されている)とNITE社(最も先進的なC/SiC, SiC/SiC複合材料の開発・製造を行っている、京都大学・東京大学・室蘭工業大学の香山 晃 教授研究室での研究成果のスピンオフ企業である)とのライセンス契約により炭素繊維強化炭化ケイ素複合材料(C/SiC)と炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素複合材料(SiC/SiC)を製品構成に含める業務拡大を実現させました。
航空宇宙産業や工業分野において1100℃までの高温材料として用いられている酸化物系セラミック複合材料に加えてAxiom社(Axiom Materials)はより高温域で用いられる材料市場に参入できることになります。JSTとNITE社とのライセンス契約によりAxiom社は航空宇宙産業や幅広い工業分野で耐熱構造材料として1400℃の高温領域までの需要を完全にカバーできるセラミック複合材料製品の供給が可能となります。この事業展開によりAxiom社はNITE社の材料科学分野や原子力プラントへの応用技術での優れた実績が世界的に認められているSiC/SiC複合材料の供給においても世界をリードする企業になります。
C/SiC複合材料はジェットエンジンや自動車の静的部品やディスクブレーキなどにおいて主として使われています。SiC/SiC複合材料の航空宇宙分野での応用では航空機用ジェットエンジン動力部やロケットエンジンの部品など高温における優れたクリープ耐性や腐食・損耗耐性が、複雑な静的/動的な応力・歪の環境下において求められる用途も含まれます。また、SiC/SiC複合材料の用途としては原子力・核融合分野、石油化学分野、その他の化学産業分野、地熱利用分野、燃焼機関や輸送分野などが挙げられます。
Axiom社は2018年初めにそれまでの強化用織布の分野における製品供給と技術協力のパートナーであったKordsa社の傘下に入りました。Axiom社のKordsa社との合併は材料強化技術の世界的なリーダーであったトルコの会社にAxiom社の材料創生力とKordsa社の企業力を加えこれまでの両社の有する先進複合材料技術のビジネスを発展させました。
市場における成長ぶりに関するコメントの要点を示す;
Johnny Lincoln, 博士、Axiom Materials社長談:「酸化物系セラミック複合材料の市場拡大を進めてきたAxiom社はJSTやNIET社との合意により我が社の保有する設備、経験、専門家、評価手法等と調和する複合材料技術を入手することになります。我々はこれらの新しい技術を成熟した形態で高温用先進複合材料市場に投入できることに興奮しています。」
Raj Dhawan、Axiom Materials事業開発・上級副社長談「これらの先進複合材料の導入によりAXIOMはセラミック複合材料業界において、最も高い温度域での応用に耐える材料も含め、包括的なリーダーシップを確保することになります。我々はJSTやNITE社と技術面でのパートナーとなり製造ラインの拡充を進めることを誇りに思います。」

  • Kordsa社について
     Kordsa社はタイヤ、建設用強化剤、複合材料技術市場の世界的な企業です。タイヤ強化技術市場における世界的なリーダーとして、米国及びアジア太平洋の広大な地域での生産活動と強化技術の全世界での供給を行っています。Kordsa社の企業活動は研究・開発と創造に基づいており、全世界に広がる807件の特許などを有している。